みなさん、こんにちは。
ChatGPTが登場して以来、最も頻繁に議論されているのは、AIがどんな仕事を代替するかという問題です。この議論については様々な意見があり、深く掘り下げる価値もありますが、私がより問いたいのは、
AIによって私たちのどんな能力が失われていくのか?そして、私たちはどの能力をAIに譲り渡さないと決めるのか?
です。
「ライティング」
「優れたライター」と「書けない人」
Paul Grahamは最新のブログ”Writes and Write-Nots”で、なぜライティングが代替不可能なのか、そして彼自身がなぜ書き続けることを選んだのかについて語っています。この記事は主に以下のことを論じています:
明確に書けるということは明確に考えられるということを意味し、その明確な思考というのは非常に困難なものです。
ライティングの難しさは、多くの教授の論文盗用事件からも垣間見えます。盗用される内容は往々にして難しい部分ではなく、基本的な能力があれば完成できる部分です。これは、論文を盗用した教授たちが、そもそもライティング能力すら持ち合わせていないことを示しています。
AIはライティングの高い壁を打ち破り、書くことへのプレッシャーを一瞬で消し去りました。これにより、世界は「優れたライター」と「書けない人」の二種類に分かれることになります。その中間は存在しなくなるのです。
これは良いことでしょうか?Paul Grahamはそうは考えていません。彼はLeslie Lamportの言葉を引用しています:
書かずに考えているとき、あなたは考えていると思い込んでいるだけです。If you’re thinking without writing, you only think you’re thinking.
産業革命以前、人々は労働のために自然と体が強くなりました。今では強い体を手に入れるためには意識的な運動が必要で、強くなることを選択した人だけが強くなれるのです。
書くことを選んだ人だけが上手く書けるようになり、賢くなることを選んだ人だけが賢くなれるのです。
ライティングは「人」とのコミュニケーション
ライティングには明確な目的があります——説得するため、コミュニケーションを取るため、メッセージに含意を持たせるため、誘いかけるため。
相手は仕事仲間、会社のCEO、顧客、行政機関、家族、友人、恋人、好きな人、嫌いな人、関係を築きたい相手など。多くの場合、これらの役割は重なり合っています。
例えば、顧客=嫌いな相手、CEO=嫌いな相手、行政機関=嫌いな相手、家族=〇〇な相手というように。
ライティングは長編小説やエッセイだけでなく、文字やスピーチによるコミュニケーション、プレゼン、要約、メッセージも含みます。
これらはすべてAIで作成できますが、それはとても形式的なメッセージになってしまいます。私の悲しい経験では、AIが書いたメッセージには含意を込めることができません。含意は、コミュニケーションの相手の感情指数、MBTI、性格の特徴(長所や短所)、市場状況、株価や仮想通貨の価格、CEOとの最近の関係性、会社の近況、会社が重視している方向性などに基づいているのです。
自分の手で書いたメッセージこそ、相手が最近考えていること、自分の目的、伝えるべきこと、達成したい目的、市場状況、会社の近況、最近の関係性などを本当の意味で組み込むことができます。
これらの背景情報を組み込む理由は、私たちがコミュニケーションを取る相手が「人間」だからです。
人間は複雑で、多くのグレーゾーンを持ち、時には非理性的で、時には極めて理性的で、感情を持っています。説得し、コミュニケーションを取り、誘い、含意を伝えるには、AIが書いたメッセージではなく、伝統的な手作業のライティングが必要なのです。
絶え間ないライティングを通じてこそ、人とのコミュニケーションは磨かれていきます。
ライティングは単なる文字の組み合わせの確率問題ではなく、私たちの書いたものを読む人、聞く人に関わることなのです。